2011/02/01 干し芋の品質について:原料芋と作り方

毎年のことですが、一年で最も寒い1月初旬から2月初旬までの1ヶ月間が干し芋作りの最盛期です。
この時期に合わせて原料芋は糖化熟成させますが、今年のように12月から寒い冬の場合は、冷えて傷まないように原料芋を囲ったりもします。

12月中にその年のサツマイモの性格を見て、寒いこの時期に甘い干し芋が仕上がるように試行します。そして今シーズンも本番を迎えました。


だいたい蒸かす前日にサツマイモを倉庫から出して、選別、洗浄。再度の選別、洗浄をします。
1、傷みがあるサツマイモの選別
2、ブラシで洗浄
3、大、中、小にサツマイモを選別
4、高圧洗浄機で、ブラシでは綺麗になりきれないサツマイモを洗浄
5、洗浄、選別したサツマイモは耐熱コンテナや蒸篭に入れて、蒸かすばかりにセットします。


自社農園でもそうですが、耐熱コンテナでサツマイモを蒸かしています。昔は写真のような大きな木製の蒸篭(せいろ)で蒸かす農家がほとんどでした。今では少数派です。風情があって良いですね。

好評販売中の「薪ふかし干し芋」の信義さんがサツマイモを洗っています。薪ふかしも手間ですが、信義さんは手洗いでサツマイモを洗います。ひとつひとつの作業が丁寧だからこそ、美味しい干し芋が仕上がります。

意外と重要なのが皮むきです。単に皮をむくのではなく、厚めに、サツマイモの肉を少し削るように皮むきすると、仕上がりがとても綺麗な干し芋になります。二度ずつサツマイモの表面をなぞるという感じでやります。


粒ぞろいのいずみです。丁寧な農家ほど、同じ位の大きさ(形状)のサツマイモをそろえて蒸かします。ほしいも作りで、蒸かしは重要ポイントで、その火の通り具合で味が左右されます。同じ位のサツマイモをそろえて蒸かす理由はここにあります。
この農家はいずみ種を中心にほしいも作りをしています。大きさをそろえる手間をかける以前に、見事に長い形のいずみ種を育てる技術があることが、皮むきしたサツマイモから窺えます。

この時期は午後の早い時間、まだ陽があるうちに、干し場の仕事は終わらせたい所です。

サツマイモを干し芋にする工程も大切ですが、サツマイモの栽培段階と、糖化段階も大切です。
そして、干し芋作りに対しての意識も品質の決め手になります。

サツマイモのデンプンが糖に変わった甘さが干し芋の甘さです。しかし、サツマイモ個々によって糖に変わりやすい、変わりづらい、があるので厄介です。
また、同じ苗で、同じ時期に植えて、同じように除草して、収穫前に同じように芋虫に葉っぱを食われても、ぜんぜん違うサツマイモが育ちます。ここが農業の難しいところです。
この畑の玉豊は、掘り起こした時は、形も肌も綺麗で、「これは良い干し芋になる」と踏んでいたので、蒸かして、乾かしてみてビックリ。糖に変わりづらいサツマイモだったので、製品にならないものが多くできてしまっています。

夏に育て、秋に収穫して、それを冬に干し芋に加工して、出来具合を見て、また春からの栽培を計画する。干し芋作りの作業は一年がかりです。


干し芋作りは、普通の農家だと農閑期の仕事になります。戦後間もない頃の話だと、干し芋農家ではない農家や漁業従事者が閑散期の仕事として干し芋作りを望んでいました。
その後第一次産業の人口が減り、専業の干し芋農家だけが産地に残りました。しかし最近は、近所の主婦の方等がパートやアルバイトで干し芋作りの応援や手伝いをするようになっています。
また、農家を継がなかった農家の子供が定年後に、干し芋作りを始めることもめずらしくなくなってきています。

いずれにしても干し芋は嗜好品という意識(昔は保存食)が作り手にも、ここ十数年で産地全体に根付いているので、「美味しいもの、高品質なもの」を作るための様々な工夫が各農家でなされています。