品種(ひんしゅ) --- 主な品種を見てゆきます

品種1品種2 があります)

サツマイモに限らず、農作物はその時代の要望から多用途な性格が求められます。そのためにたくさんの品種が生まれてきます。
ある時代にだけもてはやされた品種もあれば、長い間愛されている品種もあります。
時代を追いながら主な品種を見てゆきます。

源氏

現在作られている品種にまで影響している元祖的な品種です。
代表的な二つの古代品種は、東の「紅赤」西の「蔓無(つるなし)源氏」です。その蔓無源氏の元になる品種でもあります。
明治28年、広島県の久保田勇次郎氏によりオーストラリアから導入されました。最初は「三徳いも」の呼び名でしたが「源氏」「げんち」「元気]等と呼ばれながら全国に普及しました。
源氏の流れを汲む品種としては、「便利」「白便利」「赤便利」「愛知紅赤」「鹿児島」「立鹿児島等そして「蔓無源氏」があります。
特徴
紡錘形で、なりヅル(つるの元の部分)が長く、掘り取りがやや困難。
皮色は淡赤褐、肉色は黄白色。
デンプン歩留まりが良く、ごく粉質で食味は極めて良い。

源氏の元の名の三徳いもは、“作りやすい”“土地を選ばない”“貯蔵しやすい”という三大特徴から名付けられました。


蔓無源氏

鹿児島県の中馬磯助氏が明治40年に発見した源氏系統の品種。つるは1.5m内外の源氏よりはるかに短いので、栽培がしやすい品種です。
特徴
デンプン含量も源氏より高く、現在の高デンプン品種の多くの元品種。
栽培のしやすさも収穫量も源氏より良く、食味も良い。


四十日

千葉県でデンプン工場が始まった明治末頃には、四十日が主な原料芋だった記録があります。
「早生四十日」「早生赤」「赤四十日」等とも呼ばれました。「立四十日」はこの系統の品種です。
特徴
皮色は淡紅、肉色は灰色。
デンプン含量はやや低く、食味は中程度。育苗は容易で多収、環境適応性が大きい。


花魁

明治初年に九州から関東・東海に伝えられたといわれる。干し芋にしていた「飯郷」は「花魁」と同一品種と考えられる。「白飯郷」は花魁の系統。
特徴
長紡錘形で皮色は褐色を帯びた紫紅色、肉色は白で中心部は紫色を帯びている。粘質。


太白

明治の終わりごろ、九州から埼玉県に入ったらしい。戦時中は作付けが、55000ヘクタールを越える大規模に栽培された食用品種のひとつでした。
干し芋のタツマでも、太白は多少ですが、栽培しています。
特徴
長紡錘形でなりヅルが長く、掘り取りが困難。
皮色は鮮紅色、肉色は白。粘質で甘みが強い。


紅赤

西の「源氏(蔓無源氏)」に対して東の「紅赤」と言われる古くからの代表的な品種です。
明治31年、埼玉県の山田イチ氏が「八房」から見出した品種です。一般には「金時」と呼ばれています。埼玉県では「川越芋」と言っています。川越をブランド化させた有名な品種です。
関東の各県で、「千葉赤」「大正赤」「高座赤」「茨城赤」と呼ばれて作付けが増え、一時は36000ヘクタールにまで栽培されました。
形は最も古い形で、青木昆陽の時代の面影を残す唯一の品種と推測される。
特徴
長紡錘形で皮色は紫紅、肉色は黄色。粉質で、口当たり良く味も良い。貯蔵が困難。


七福

明治33年、広島県の久保田勇次郎氏によってアメリカからもたらされた。
九州、四国、瀬戸内で作付けされ、戦時中は25000ヘクタール栽培された。
特徴
扁平に近い短紡錘形で、皮色は黄白色、肉色は黄色掘り取りが困難。
皮色は鮮紅色、肉色は白。肉質は半粉質だが貯蔵で粘質になる。貯蔵性が良い。

七福の名の由来は、(1)風土を選ばず作付けできる(2)作りやすく不作が少ない(3)貯蔵性が良い(4)食味が良いこの4点に、イタリアからアメリカに渡り日本に来た=3国を伝わったことを加えて七福と名付けられました。


隼人いも

大正時代から鹿児島で栽培されています。アメリカの品種「ポートリコ」と同じ品種だと思われます。三重県の“きんこ芋”(干し芋の名前)は隼人いもを加工しています。
特徴
長紡錘形で、皮色は黄褐色、肉色は鮭肉色で、カロチン含量が多く甘みが強い。


沖縄100号

昭和9年に沖縄で育成された。千葉県では昭和11年早掘り用の奨励品種にして、それ以降戦中・戦後に全国に広がり80000ヘクタールまで拡大した。デンプン歩留まりは低いが、作りやすい品種。デンプン原料用・飼料用の品種。
特徴
皮色は淡紅色、肉色は淡黄色で、粘質で食味は良くない。貯蔵性は低い。


護国藷(ごこくいも)

昭和13年、三重県で育成されたが、高知県で育成された「高系4号」と同一品種。昭和24年には95000ヘクタール栽培されていた。
特徴
紡錘形で、皮色は淡黄褐色、肉色は黄白で、食味は中位。デンプン原料用・飼料用の品種。


高系14号

昭和20年、高知県で選抜された。宮崎県の「ことぶき」も同じ品種です。最盛期は25000ヘクタールの栽培、平成7年の栽培では10000ヘクタールです。有名な「鳴門金時」はこの品種の系統です。
特徴
長紡錘形で、皮色は紅色、早掘りの食味が非常に良い品種。


農林1号

千葉県で育成され昭和17年に命名登録された。「浦和赤」「紅農林」はこの系統の品種です。関東から中部・近畿に普及し最盛期には100000ヘクタールまで栽培された。
特徴
下膨紡錘形で、皮色は赤褐色、肉色は淡黄から黄白。粉質でやや硬いが食味は良い。デンプン歩留まりが高く、貯蔵性も優れている。食用(焼き芋)デンプン原料用品種。


農林2号

鹿児島県で育成され昭和17年に命名登録された。東の農林1号に対して九州を中心に普及し最盛期には90000ヘクタールまで栽培された。
特徴
短紡錘形で、皮色は黄白、肉色は淡黄。肉質は中粉。収穫量もデンプン歩留まりも良い。デンプン原料用品種。


農林3号

鹿児島県で育成され昭和19年に命名登録された。農林2号よりも低温適性があり、九州南部の高冷多湿帯に栽培された。
特徴
短紡錘形で、皮色は黄白、肉色は淡黄。肉質は中粉。収穫量もデンプン歩留まりも良い。デンプン原料用品種。


シロセンガン(農林13号)

千葉県で育成され昭和27年に命名登録された。飼料用に適した品種だが、干し芋の原料にもされたらしい。現在の茨城県の干し芋の主流品種の玉豊(タマユタカ)以前の品種であったかまでは確認できていません。
特徴
紡錘形で、大きく育ちやすい。皮色は白黄色。粘質で食味は劣り、デンプン歩留まりも低いが多収で作りやすい品種。


ベニセンガン(農林19号)

鹿児島県で育成され昭和30年に命名登録された。西日本の温暖地に適した多収の飼料用品種。
特徴
下膨短紡錘形で、皮色は紫紅。肉色は淡黄で朱斑がある。デンプン歩留まりも食味も中程度。


クリマサリ(農林21号)

九州農業試験場指宿試験地と関東東山農業験場千葉試験地で育成され昭和35年に命名登録された。早掘り用品種として特に関東南部では優れた食味となる。ただし、9月下旬以降の収穫だと品質が劣ってしまう。
特徴
長紡錘形で、皮色は紫紅、肉色は黄白色。蒸かし芋の肉質は極粉質で繊維が少なく均質。


タマユタカ(農林22号)

千葉県で育成され昭和35年に命名登録された。茨城県の干し芋の主要品種で、現在でも干し芋用として全体の約90%が作付けされています。
干し芋にすると甘みがとても強い干し芋適性品種。
特徴
短紡錘形で、大きく育ちやすい。皮色は両端に淡紫紅色を帯びた黄白色。デンプン歩留まりは低いが極めて多収で作りやすい。デンプン原料用・飼料用にも向く。


ベニワセ(農林23号)

熊本県で育成され昭和34年に命名登録された。芋の肥大が早いので、かなり冷涼な東北地方でも栽培できる品種です。
特徴
下膨紡錘形で、皮色は紅色、肉色は淡黄、食味は高系14号よりやや劣る。早期出荷用の食用品種。


ゴコクマサリ(農林24号)

中国農業試験場で育成され昭和36年に命名登録された。東海・近畿・瀬戸内の沿岸や乾燥する痩せ地に適する。
特徴
下膨紡錘形で、皮色は灰黄色、食味はよくない。デンプン歩留まりは中程度。デンプン・飼料用品種。


アリアケイモ(農林26号)

九州農業試験場で育成され昭和37年に命名登録された。
特徴
短紡錘形で、皮色は黄色、デンプン歩留まりは高い。デンプン原料用品種。


コガネセンガン(農林31号)

九州農業試験場で育成され昭和41年に命名登録された。主にデンプン原料用だが、加工用にも使われる。最近では青果用としても流通している。
特徴
紡垂形または下膨紡錘形で大型、皮色は黄白色から黄金色、肉色は黄白色。蒸かし芋の肉質は黄白色、きめ細かい粉質で食味が良く、デンプン歩留まりは極めて高い。
焼酎用の主要原料で、その焼酎は独特の芋の香りや甘みがあり、評価が高い。


ナエシラズ(農林32号)

中国農業試験場で育成され昭和49年に命名登録された。芋が肥大しないので、直蒔用品種。
特徴
紡垂形で揃いは良いがやや小型、皮色・肉色ともには黄白色。中粉質で食味は普通、デンプン歩留まりは高い方。


ベニコマチ(農林33号)

農業試験場四街道試験地で育成され昭和50年に命名登録された。土の軽い洪積台地に適した品種。
特徴
皮色は紫赤から紫紅色、肉色は黄色。粉質で繊維が少なく食味がきわめて良い。


ミナミユタカ(農林34号)

九州試験場で育成され昭和50年に命名登録された。
特徴
紡錘形で、皮色は黄褐色、肉色は淡黄。デンプン含量はコガネセンガンよりやや低い。芋の肥大は遅いが、生育末期まで肥大が継続するので、九州南部の暖地で極めて多収。デンプン原料用品種。


ツルセンガン(農林35号)

千葉県の四街道試験地で育成され昭和56年に命名登録された。茎葉専用の飼料用品種です。
特徴
生育が旺盛で、特に茎葉が繁茂します。皮色は淡黄褐色、肉色は黄白。食味は不良です。


ベニアズマ(農林36号)

茨城県つくば市の農水省農業研究センターで育成され昭和59年に命名登録された。青果用として現在でもとても人気、馴染みがある品種です。平成7年の栽培面積で13000ヘクタールです。
特徴
長紡錘形で、皮色は濃赤紫色、肉色は黄白。粉質で繊維が少なく食味は極めて良い。


ベニハヤト(農林37号)

九州試験場で育成され昭和56年に命名登録された。芋のカロチン含量が高く、これまでの農林番号品種(農林○○号)にはない橙黄色の肉色を持っています。
特徴
紡錘形で、皮色は赤紅です。


シロユタカ(農林38号)

九州農業試験場で育成され昭和60年に命名登録された。早掘り適応性が高い品種。デンプン歩留まりはコガネセンガン並みに良い。
特徴
紡垂形で、皮色は黄白色で頭尾部がわずかに紅色を帯びている、肉色は淡黄白色。


シロサツマ(農林39号)

茨城県つくば市の農水省農業研究センターで育成され昭和61年に命名登録された。
特徴
紡錘形から短紡錘形で、皮色は淡黄色、肉色は白。デンプン歩留まりは高く、多収で貯蔵は容易。デンプン原料用品種。



※日本いも類研究会のサイトも参考にさせて頂きました。


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