ほしいもの作り方 ほしいも編2

ほしいも編1ほしいも編2サツマイモ編1サツマイモ編2番外編があります)

サツマイモに熱を加えて、切って、乾燥したのが“ほしいも”とここでは定義します。番外で熱を加えない生のサツマイモを切ったのも“ほしいも”とします。
けれど一番普及している作り方・・・蒸かして作る方法を紹介します。
サツマイモの栽培方法も合わせてご紹介します。

蒸かしはとっても重要です!

稲作では「苗半作」、日本酒の仕込みでは「一麹、二酒母(もと)、三造り」などとモノづくりのキーになる言葉があります。これに習って干し芋作りを表現すると、「一蒸かし、二糖化、三天日干し」になります。

それほど“蒸かし”は大切です。
糖化熟成させたサツマイモの甘みを引き出すのが蒸かしです。
サツマイモはゆっくりと長時間加熱することで、デンプンを糖に変える酵素が働きます。
丸干し芋にする一番小さいサツマイモでも最低1時間は蒸かし、20分はおもします。(“おもし(おもす)”については別に説明します)
特大サイズだと2時間以上蒸かし、おもしにも充分に時間を掛けます。

蒸気を使ってじっくり蒸かすことが、甘い干し芋を作る絶対条件です。

<ほしいもこぼれ話(4):「“おもす”ってなんて書くの?」>

じっくり蒸かすという言葉には二つの意味があります。一つ目は文字通り「時間をかけて蒸かすこと」二つ目は「おもす」ことです。
「おもす」とは蒸けあがったサツマイモにほんの少し熱を加えるか、または、余熱で蒸らすことを言います。「ご飯を蒸らす」と似た感覚ですね。
蒸けあがったサツマイモは熱くないと皮がむけなくなるので、余熱だけでは冷めてしまう寒い時は少し蒸気で熱を加えます。

「おもす」とか「おもしている」と頻繁に使っているのですが、“どういう漢字を書くのだろうか?”実はほしいも産地の誰に聞いても解らないのです。ちょっと不思議な言葉です。

皮むき。これは手間がかかるけれど丁寧に作業します



蒸かしあがった熱々のサツマイモは熱いうちに皮をむいて行きます。
サツマイモは大きさも違えば、形も違います。そして時間を掛けて蒸かすので、とてもやわらか。力加減が難しいくらいです。
それをひとつひとつ丁寧に皮むきします。

干し芋作りで最も時間がかかり手間がかかるところです。しかしここでしっかりと皮むきしておくと、出来上がった干し芋はとても綺麗に仕上がります。

プロのほしいも農家の腕の見せ所!(スライスと並べ)



皮むきが終わったサツマイモは、冷ましておきます。よく蒸けているサツマイモは柔らかいので、熱いままでスライスをすると崩れてしまうからです。

“つき台”と呼ばれる道具を使ってスライスします。ピアノ線が均等に張ってあります。
サツマイモには頭と尻尾がありますから、柔らかい頭の方からスライスするとスムーズです。

平干し芋は1回スライスすれば出来上がりですが、角切り芋はどうやってスライスしているか解りますか?十文字にピアノ線が張ってある“つき台”をイメージするかもしれませんね。
答えは、「2回スライスをする」です。一度スライスをした後に90度回転させてもう一度つき台に通します。
サツマイモには繊維質があるために、スライスをすると繊維がつき台に付きます。それを取り除く時(「掃除する」と言います)に、十文字にピアノ線が張ってあると、掃除がやりづらいからです。

スライスが終わると、簾(すだれ)と呼ばれる天日干しにする網の上に並べて行きます。

冷めたとはいえ柔らかいサツマイモが薄くスライスされていますから、簾に並べるのにも気を遣います。身が崩れないように慎重に、慎重に、と想像されるでしょうか?
確かに身が崩れないように気をつけるのですが、プロの干し芋農家が並べるとあっという間に簾がスライスされたサツマイモで一杯になります。
まるでトランプを並べるような速さです。
素人の差が歴然と現れる作業です。干し芋作り50年は伊達ではありません!
<ほしいもこぼれ話(5):「小さい差ですが、プロは慎重に判断します」>

つき台のスライス幅はいつも同じ間隔ではありません。生のサツマイモの状態と作る時の気候から、経験で判断します。
平干し芋だと8mm~9mmの微調整を、角切り芋だと18mm~20mmの間で幅を決めます。

余談ですが、四切りだけは十文字のつき台を使います。間隔がかなり広いつき台を準備しています。“つくこと”ができる場所を多く用意したつき台です。これはタツマオリジナルです。
また四切りは、均等に4等分するのがなかなか難しいですよ。

ひとつのつき台の上に、等間隔にピアノ線を張った枠の重ねています。4分割できる場所をなるべく多く取っています。

ここからはお日様に頑張ってもらいます




色々な乾燥の方法がありますが、やっぱり天日干しが一番です。甘く乾いた干し芋を食べると太陽のありがたさを実感します。

平干し芋だと約1週間かけて仕上げるのですが、日に日に乾いて行くのがわかります。甘みが増すに連れて飴色に光ってきます。サツマイモが干し芋になって行く様が見てとれます。

ただしこの間、干し芋農家はただほったらかしではありません。毎日のように干し場に通い手入れをします。天日干しだと雨が降ったり風が吹いてもおかしくありませんから。

特に鳥には要注意です。調度乾いてきた食べごろを狙ってきます。

また丸干し芋は特に念入りに手入れをします。仕上がるまでに最低でも3週間、一月かかる場合もありますから、何度も何度も、ひっくりかえしたり、形を整えたりします。
不思議なもので手入れをすればするほど、美味しい干し芋になります。まるでこちらの気持ちに応えてくれているようです。
<ほしいもこぼれ話(6):「ほしいも農家は気象予報士?」>


干し芋作りの間、一日に何回天気予報を聞くかわからない程、天気を気にします。
雨が続く予報や温かい予報がでると、干し芋作りを中断する時もあります。
平干し芋でも1週間干しますから、明日あさってだけでなく出来る限りの情報を集めます。天気図を見るだけで、自分なりに判断して作業日程を決めるほしいも農家もいるほどです。自然に気象には詳しくなってしまいます。

そして、大荒れの予報の時は大変です。大荒れとは大雨や大風や大雪です。干し場にある干し芋をすべて建屋にしまうことにもなるからです。