ほしいもの作り方 サツマイモ編1

ほしいも編1ほしいも編2サツマイモ編1サツマイモ編2番外編があります)

干し芋のタツマでは、生産しているすべての畑が有機栽培です。農薬も化学肥料も使わない栽培です。この項では、有機栽培と一般的な栽培の両方をご説明して行きます。

春、種芋をひっぱり出します

3月のお彼岸明けの頃、大事に大事にしまっておいた種芋を保管庫から出してきます。サツマイモは寒さに弱いので、暖かくなるのを待って気温が上がった頃出します。
毎年のことですが、無事に冬を越してくれたかが一番気にかかります。全部が無事とまでは行かなくても、今年の分が確保できているかを確認します。
<ほしいもこぼれ話(7):「ほしいもになるサツマイモとは?」>


普段見かけるサツマイモとは違うサツマイモが干し芋になります。
お馴染みなのは、紅あずまや金時芋ですが、干し芋用のサツマイモは、玉豊(たまゆたか)や玉乙女やいずみという品種です。
もちろん干し芋にしなくても食べることができますが、食感が異なります。
焼いたり蒸かしたりしても、紅あずまや金時のようにホクホクした美味しさはありません。もっとべっとりしています。 逆に、紅あずまや金時をほしいもにすると、固く仕上がります。

苗床の準備です

ビニールハウス内で苗を作りますから、その準備をはじめます。たいていは、干し芋を干していた干し場のハウスを使います。
雨よけのビニールを一旦はずして地面に雨を当てます。そして耕起、またたい肥や肥料も入れます。今年の分が確保できているかを確認します。

同時に畑の準備も進めます

畑は数回耕運したいので、干し芋作りが終わるとすぐに、冬の間ねむらせていた畑に行きます。
輪作のための麦は収穫するためではなく、土作りの一環で蒔いてあったので、まずは、それを畑に鋤き込む作業をします。また一年に一度は、通常よりも畑を深掘りするのもこの時期です。
<ほしいもこぼれ話(8):「ほしいものサツマイモは自然に任せて育てます」>

一般の農産物は出荷時期で価格の変動が大きいので、需要がある時期に合わせて栽培して行かなければなりませんが、ほしいも用のサツマイモは、それをする必要がなく、サツマイモに合わせて栽培できるメリットがあります。
最終的に冬の間に干し芋にすれば良いのです。
(ビニールハウスの助けや、稲わらを敷いて温度を保つなどの最小限の工夫だけですみます)

春暖かくなってから苗を植えて、秋に霜が降りる前に収穫という自然に合わせて育てて行きます。

種芋を伏せこみます



種芋を苗床に植えることを「伏せこむ」と言います。
何事も準備が必要で、伏せこむまでにはいくつかやっておかなければならないことがあります。

苗作りをしている時のほしいも産地(茨城県北部)はサツマイモにとってまだまだ寒い気温です。ですからビニールハウス内で苗を作るのですが、ハウス内の温度に加えて、もう少し苗床の温度=地温を高くしておく必要があります。
そこで、一般的には石灰窒素と化学肥料を使っています。その目的は、苗床をアルカリ性にする、土壌消毒、種芋への肥料と三つあります。

干し芋のタツマでは、それらを使いませんので、自家製たい肥を苗床に入れます。自家製たい肥は、干し芋加工の時にでるサツマイモの皮と米ぬか、モミガラ、大豆を2年間寝かせて作っています。

後は苗床に水を十分に含ませておきます。これによりたい肥が熱を持ちます。そして、種芋が発芽しやすくなります。 伏せこみから逆算して、10日ほど前からこれらの準備をします。

4月上旬の天気が良い日を選んで「伏せこみ」をします。等間隔に種芋を並べて行きます。
上から自家製たい肥を種芋に乗せて、稲わらをかぶせて、ビニールハウスを閉じます。
この後は水管理と温度管理です。

苗を作りながら、畑も準備します

干し芋の加工が終わると畑を準備して行くのですが、秋の麦が土にかえるまでは何回か鋤きこむ必要があります。
定期的に畑を回り、耕運します。
<ほしいもこぼれ話(9):「種芋は茹らないように消毒します」>


干し芋のタツマではすべての畑で有機栽培をしています。一番厄介なのは菌です。一般栽培では農薬で消毒をすればOKですが、有機栽培はそうは行きません。
特に注意するのが、種芋です。ここが始まりだからです。
農薬を使わない代わりは・・・。

熱を使って消毒します。お湯か蒸気のどちらかです。
お湯の中に48℃で40分間、種芋を浸します。また、蒸気の場合は、40℃で24~36時間かけて種芋を消毒します。 時間になったらすぐに種芋を冷まします。

ポイントは、温度を時間を守ることです。足りないと消毒できないですし、過剰だと種芋が茹だってしまいます。

苗に水をやって、温かくしてやって、でも過保護は禁物



4月の干し芋産地は霜注意報がでる時季です。昼間ハウス内は気温が上がりますが、朝晩はかなり冷え込みます。 ハウスを開け閉めして温度管理します。水も乾いてきたらたっぷり与えます。
5月連休明けになると、苗も育ち、過ごしやすい気候になります。それに合わせてハウスを開放します。

温度は高ければ高い程、水も多ければそれなりに早く苗は育ちます。けれど、あまり過保護にすると弱い苗になり、いざ畑に出すと生きていけなくなります。
ある程度育ってきたら、ちょっと寒に当てたり水を控えます。そうすると、太い節がある強い苗に育ちます。

苗を切ります

サツマイモの苗は“つる”です。
30cm程に伸びたものから切って行きます。
順次伸びたものを切って行くのですが、一度切ったつるも、節を残しておけばまた、伸びてきます。
サツマイモは本当に強いです。

畝を立てて、苗を植えます=定植



3月から準備をしておいた畑に畝(うね)を立てて苗を植えます。

切った苗は数日ほったらかしにします。するとしおれてきます。ほんの少しですが、根が出てきます。
そうなったら植え時です。
前の晩に水に付けて、畑に植えます。そうすると水を得た魚のように、根付きが良いのです。

一度飢餓状態にしておくことで、サツマイモが持っている生命力を引き出します。

畝は2種類あります

普通に土を盛るだけの畝(うね)と黒いビニール(マルチ)を張って畝を立てるのと2つの方法があります。

普通に立てる方は、苗を植える直前に立てます。手間もかかりません。
マルチは手間が掛かりますから、あらかじめ立てておきます。植える時も穴を空けながら植えます。
けれど、温度が高く保てるのと、畝に雑草が生えないメリットがあります。

干し芋のタツマでは、畑により使い分けています。
<ほしいもこぼれ話(10):「苗切りのプロの技」>

伸びてきたつるを切って行くのですが、コツがあります。節を残して切ると次にまた苗になります。また、なるべく垂直のまま、苗を倒さないように切ります。するといつも垂直のまま苗が伸びてきますから、作業がやりやすいのです。言うは易しですが、なかなか大変です。密集しているつるをかき分けて切るからです。