ほしいも統計

干し芋・サツマイモの成分編サツマイモ・ほしいもの生産量編サツマイモの生産量(日本)奨励品種編 があります)

干し芋とサツマイモにまつわる統計をまとめてみました。
(一部を「さつまいも 坂井健吉著」「ほしいも百年百話 先崎千尋著」「茨城県農林水産部」「農林水産省」から引用しています)


サツマイモの奨励品種

「奨励品種ってどういう意味?」
農業に携わっていなくてもだいたいの意味は理解頂けるとは思いますが、奨励品種について少し説明します。

各都道府県が、普及させたい優良な品種を決めて奨励品種とします。普及させたいため、奨励品種は非奨励品種よりも買い上げ価格を高くする等の措置をとることもあります。

奨励品種を定めている農産物の中で、米は全都道府県(東京を除く)で各自に決められています。
麦類と大豆は、ほとんどの都道府県で決められています。
その他、小豆等の豆類、甘藷、馬鈴薯、ソバ等の雑穀、サトウキビ・テンサイの糖料作物等で定められています。これらは、一部の都道府県で決められているのが一般的です。

  食用 加工用 デンプン原料(飼料)用
山形 高系14号(準)、紅アズマ(準)    
茨城 紅アズマ、出島系4、紅マサリ(準) 玉豊、ひたちレッド(準)玉乙女(準)、紫マサリ(準)  
千葉 紅アズマ、紅コマチ、高系14号、総の秋    
山梨 クリマサリ、農林10号 シロセンガン 玉豊
富山 紅アズマ、鳴門金時    
福井 鳴門金時、紅アズマ    
福岡 高系14号(準)、紅アズマ(準)、パープルスイートロード(準)    
長崎 農林1号、高系14号、紅オトメ   農林1号、農林2号
大分 高系14号、紅アズマ    
宮崎   黄金千貫、シロユタカ、コナホマレ、ダイチノユメ、紫マサリ  
鹿児島 高系14号、黄金千貫、紅アズマ、紅隼人、紅はるか 黄金千貫、高系14号、アヤムラサキ(準)、ジェイレッド(準) 【原料用】シロユタカ、シロマサリ、コナホマレ、ダイチノユメ
【焼酎用】黄金千貫、ジョイホワイト(準)
沖縄 ナカ紫、サキヤマ紅、アジマサリ、沖縄100号、営農36号、おきひかり、名護まさり、こがねゆたか、アヤムラサキ、備瀬、春こがね、沖夢紫    
  • 山梨県は作付け面積52ha(全国は40700ha)、作付けシェアが全国の0.1%ですが、食用・加工用・デンプン用に奨励品種があります。玉豊は加工用でなくて、デンプン用というのも面白いですね。
  • 北陸で有名なサツマイモは、石川県の五郎島金時です。その影響でしょうか?富山県と福井県の奨励品種に鳴門金時が入っています。
  • 関東のサツマイモ県の茨城県、千葉県にはもちろん奨励品種があります。干し芋県茨城は加工用に4品種が奨励品種です。
  • この他にも食用の紅マサリが干し芋に加工されます。他にも泉13号、紫芋(アヤムラサキ等)、兼六、安納芋も干し芋に加工されています。
  • 九州がサツマイモ王国ということもこの表でわかります。特に鹿児島県は薩摩の国ですね。
  • 鹿児島県では黄金千貫が、食用・加工用・デンプン用で奨励品種になっています。万能サツマイモというところでしょうか。
  • 沖縄県は作付け面積251ha、作付けシェアが0.6%ですが、12品種が食用で奨励品種になっています。サツマイモの日本上陸の地の面目躍如です。また、いろいろなサツマイモを使い分けているのではないかということも推測されます。

偉大なサツマイモ

サツマイモの歴史で何度も触れましたが、サツマイモは救荒作物として江戸時代から飢饉の時に、戦後の食糧難の時に、その優れた特性が活かされてきました。(ほしいもの歴史 サツマイモ編2 はこちら)
今では救荒作物というよりも、お菓子やおやつとして、芋焼酎として好まれている傾向がありますが、いずれにしても優れた効率の良いエネルギー蓄積というサツマイモが持つ特質の賜物です。
そんなサツマイモの偉大さを解明してみます。
【単位面積当たりのエネルギー生産力という考え方】
サツマイモが優れている点をひとことで言うと、「単位面積当たりのエネルギー生産力が日本一の作物」となります。(言い換えますと、「作物が光合成によって太陽エネルギーを固定する能力が日本一」)

主要作物で比べた表を掲載します。

作物名 10aあたりの収穫量(kg) 農作物100gあたりのエネルギー(kcal) 10aあたりのエネルギー生産量(千kcal) サツマイモを100とした時の比率
サツマイモ 2,330 123 2,866 100
ジャガイモ 2,997 77 2,308 81
サトイモ 1,155 60 693 24
525 351 1,843 64
小麦 302 333 1,006 35
大麦 374 341 1,275 44
大豆 181 417 755 26
エネルギー生産力は、(農作物の収穫量)X(100gあたりのカロリー値)です。
表からも解るとおり、穀物の方が芋類に比べてカロリー値は高いのですが、芋類はそれを補う収穫量があります。サツマイモは収穫量ではジャガイモに劣るものの、カロリー値が高いためにエネルギー生産力は高くなります。

そして、サツマイモの優秀さはこれだけではありません。
痩せた土地でも、砂地でも栽培できることも強みです。タツマの茨城の長砂農園にしても、干し芋発祥地の静岡の御前崎地方にしても、海に近い砂地の畑です。土が軽くて痩せた土地です。そんな土地では作付けできる農作物は限られます。しかし、サツマイモなら大丈夫です。
畑の地温が15度を目安に霜が降りるまでなら畑を選ばずに栽培できます。(水はけの良さは必要です。水が引くことは条件になりますがたいていの畑はそれを満たしています)
そしてこれも重要な点ですが、日照りにも強いのがサツマイモです。

エネルギー生産力日本一ということと、どこでもどんな天候でも何とか収穫ができる頼もしさから救荒作物として重宝されてきたのです。
【サツマイモの裏技】
稲のように地面の上に実が成ると、必然と実る限界がでてきます。稲穂が倒れてしまうか、鳥が食べます。ところがサツマイモの場合、イノシシが掘ることもありますが、そんなイレギュラーは別とすると、霜が降りるギリギリまで掘らなければ、土の中で大きく育つのです。葉っぱが枯れてなくなってしまえばそれまでですが、葉っぱがある間、土の中にいる間中光合成を続けます。
これもサツマイモ(芋類)の特徴のひとつです。