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SPAC演劇「青森県のせむし男」 演出:渡辺敬彦

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「青森県のせむし男」は、SPAC俳優発案企画第一弾の演劇。
SPACの若手俳優たちを中心として、
自分たちで企画、演出、大道具まで作ってしまうというもの。

原作は寺山修二で、
天井桟敷第1回公演として1969年4月に初上演されています。

物語は、おんな浪曲師が三味線の音色に合わせて歌う浪花節によって進行し、
役場の戸籍係が失踪したという村人たちの噂話から始まります。
戸籍係は、地元の有力者である大正家のいざこざに巻き込まれるのを恐れてのことです。

大正家に仕えていたマツが、跡取り息子に体を奪われ身ごもります。
世間の評判を気にした大正家によってマツは息子と結婚させられるが、
赤子が生まれてくる前に夫は死亡。
生まれてきた赤子は醜いせむしであったため、
下男にその子を捨てさせる大正家。

時は流れ、大正家の女主人となったマツ。
そこへ一人のせむし男が現れます…。

一人の女としての幸せを奪われたマツの怨念や、
醜く生まれてしまったせむし男の哀しさと、
生まれてきたこと自体の意味を探すという物語ですが、
最初から、村人は誰一人として戸籍がなく、
自分自身の存在を証明するものがないという状態で、
それは観ているこちらにも「あなたは何者?」と問いかけてくるようでした。

寺山修二さんの作品は、
とにかく一筋縄では理解できないと思っていましたが、
SPAC若手俳優陣による今作品は、
全体的に暗いムードの話でありながら、
ユーモラスな場面も多く取り入れられていたため、
とても楽しく鑑賞できました。

それにしても、
SPACの俳優さんたちの多彩さには驚きました。
そういうものが育つ土壌というのは、
やはり総監督の宮城さんが作り出しているのだなあと感じました。
本公演に負けない素晴らしい演劇でした。

【ほし太の日向ぼっこ】

日時: 2016年01月18日 13:51