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さよなら国立劇場 歌舞伎公演 妹背山女庭訓第二部

今月で57年の歴史に幕を閉じる初代国立劇場の、
さよなら歌舞伎公演の大千秋楽に行ってきました。
9月と10月に2か月連続で通し上演していた
『妹背山女庭訓 第二部』です。
以前、大島真寿美さんの「渦~妹背山女庭訓 魂結び」
という本を読んで、作者の近松半二の生涯に触れていたので、
この演目には何となく親しみを感じていましたが、
実際に上演を観るのは初めてなのでとても楽しみにしていました。

まずは序幕の舞踊劇
『道行恋苧環(みちゆきこいのおだまき)』から。

求女と名乗り烏帽子折に身をやつし三輪の里に潜伏している
鎌足の子・淡海(梅枝)は、謀反人の入鹿を倒す手立てを探しています。
杉酒屋の娘お三輪(菊之助)と恋仲となる一方で、
夜毎通ってくる謎の姫君・実は入鹿の妹・橘姫(米吉)の正体を探るべく、
七夕の夜に姫の後をつけています。
一方、恋人の求女が別の女の後をつけていることを心配したお三輪も、
求女の後を追ってきます。
三人が鉢合わせして恋の鞘当てとなり、
という華やかで楽しい舞踊でした。

二幕目は『三笠山御殿の場』
自らを帝と称する入鹿(歌六)の豪華な屋敷を舞台に繰り広げられる
この物語の最大の山場。
入鹿の家来宮越玄蕃(彦三郎)と荒巻弥藤次(萬太郎)や、
鎌足の使者と名乗る漁師・鱶七(芝翫)の形の良さ、
いじめの官女とよばれる男役扮する官女たちのお三輪への意地悪や、
豆腐買おむら(時蔵)という幹部俳優が演じるというキャラクター、
どれもみな濃くて見どころ満載でした。
そして嫉妬に狂うお三輪の血が入鹿討伐に不可欠だということも、
明らかになります。
入鹿討伐のため鱶七に刺されたお三輪は、
自分の血が求女の役に立つことを知り喜んで死んでいきます。

大詰は、
『三笠山奥殿の場と入鹿誅伐の場』
美しい秋の景色を眺め橘姫の舞を楽しむ入鹿。
橘姫は、恋しい淡海のため兄の入鹿から十握の宝剣を奪おうとして、
逆に入鹿の凶刃に倒れます。
そこに不思議な笛の音が響き入鹿が前後不覚に陥ります。
それこそがお三輪の血を注いだ笛の音でした。
美しい秋の景色の中、入鹿が倒され平穏が訪れます。

国立劇場さよなら特別公演の掉尾を飾る演目にふさわしい、
豪華な顔ぶれによる大舞台を堪能することができました。
終演後、
日本芸術文化振興会理事長と出演俳優さんたちとの一本締めで幕が降ろされ、
短い期間でしたが、
国立劇場に通った日々の思い出を振り返りながら帰途につきました。
再開されるのを楽しみに待ちます。

【ほし太の日向ぼっこ】

日時: 2023年10月30日 13:40