芹沢銈介美術館に併設されている芹沢銈介氏の自宅は、
普段は土日に一階の応接間だけが見学できるのですが、
今回は二日間のみ事前予約制でお二階を拝見することができると、
市の広報誌に情報が載り予約初日に申込みして楽しみにしていました。
もともとは宮城県登米市にあった板倉で、
一階は米や野菜や農器具を収納し
二階は使用人や子供などの宿泊場所として使われていたものだそう。
芹沢氏はこの建物を気に入り東京の蒲田に移築しましたが、
蒲田には本宅があったので寝泊まりはそちらで行い、
この家は客人をもてなしたり、作品作りに利用されていたとのこと。
何度も拝見したことがある一階の応接間。
ここで学芸員の方から詳しい説明を聞きました。
部屋の真ん中には壁がありましたがその壁を取り除き一間にして、
出窓をつけ雪見障子にし、
建具や照明などインテリアのデザインは全てご自分でされたそうです。
壁の色も窓側は白ですが部屋の奥側は深緑となっていて、
置かれている家具も全て芹沢氏の選んだもの。
モダンで落ち着いた雰囲気です。
出入口側に移動した壁にはフックが取り付けられていて、
ここには訪れる方のために作品や収集品を、
自身が選んで飾り付けされていたということで、
そのためには徹夜も惜しまないほどの心配りですが、
来客があまり興味を示さないと不機嫌になってしまったとか。
登米市にあった当時のこの家の写真も見せていただきました。
如何にも農家の蔵という雰囲気の建物が、
これほど素敵になるのはひとえに芹沢氏の審美眼のおかげですね。
いよいよお二階へ、
ドキドキします。
お二階は10帖二間の和室になっていて、
襖には葛布が貼られていて木製の丸い取っ手がついています。
現在開催中の「芹沢銈介の収集 海外篇」に合わせて
収集品がセンス良く飾られていました。
東北地方の藍染めと両方とも酒を入れる器だそう。
右側は家紋入りで主に婚礼に使用したのだとか。
畳に座って窓を見ると窓の手すりと窓枠の桟の位置が、
ぴったり重なるようデザインされているのがわかります。
手すりを触ると柔らかな丸みがあり握りやすくなっていて、
細部まで芹沢氏のこだわりが感じられました。
庭の植木は何本かは実際のものを持ってきて植えたもので、
その他も実際に植えられていた木と同じものを植えているそうです。
門から庭へ延びるアプローチも芹沢氏のデザインしたものでした。
約30分間の見学時間でしたが、
少人数(5名)ずつの訪問だったので、
芹沢氏のこだわりが詰まった素敵な空間を満喫することができました。
【ほし太の日向ぼっこ】