残月記 小田雅久仁著 双葉社
美容院で雑誌を読むときに必ずチェックするのがお勧め本のコーナー。
この「残月記」も雑誌の書評を読んで読みたくなりました。
本屋大賞2022の候補作でもあったのでこれは間違いないかなと。
月にまつわる短編2編と中編が1編。
それぞれの物語に関連はなく独立した話でした。
「そして月がふりかえる」はパラレルワールドを描いた作品で、
家族とレストランに出かけた主人公は偶然月が月が裏返るのを目撃する。
すると家族が突然自分を見知らぬ人間だと言い始める。
今まで当たり前だと思っていたものが突然奪われ、
全く違う環境に取り込まれてしまうというとても怖いお話でした。
「月景石」は、
月の風景が浮かび上がる石「月景石」を枕の下に入れて眠ると、
イシダキという月世界に生きる別の人生を体験することになり、
次第に夢と現実が交錯していく。
「残月記」は、
独裁国家と化した近未来の日本を舞台に、
月昂(げっこう)という不治の感染症に侵された者たちの物語。
月昂者たちは差別的待遇を受け、
月を浴びることで優れた芸術的創造性を発揮したり、
身体能力がたかまり剣闘士となってコロシアムで闘わされるなど、
様々な人類の過ちを彷彿とさせるエピソードがたくさん盛り込まれていました。
悲惨な運命に翻弄されながらも希望の光が感じられ、
壮大な愛の物語でもあるラストでした。