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熱源 川越宗一著 文藝春秋

木版画の友人がアイヌ文様の版画を制作していて、
ゴールデンカムイの話をしたらすっかり意気投合。
アイヌのことがよくわかるお勧めの本として貸していただいたのが、
2019年、第160回直木賞受賞作品の「熱源」でした。

樺太(サハリン)生まれのアイヌ ヤヨマネクフは、
開拓使たちに故郷を奪われ集団移住で北海道へ、
そこで学校に通い日本人になるための教育を受けますが、
アイヌは、本当に劣った滅びゆく民なのかを疑問に思う。
天然痘やコレラの流行で妻や友人たちを次々と亡くし、
再び故郷の樺太に帰ることを志します。

ブロニスワフ・ピウスツキは、
リトアニアに生まれロシアで大学生活を送るなか、
同化政策でポーランド語を話すことを禁じられていました。
そして学生運動から皇帝暗殺計画に巻き込まれ苦役囚として樺太に送られることに。
人間としての生きる気力を失いかけたブロニスワフは、
先住民族ギリヤークと出会い、
その生き方を知るにつれ再び生きる気力を取り戻します。

日本人にされそうになったアイヌと、
ロシア人にされそうになったポーランド人。
アイデンティを揺るがされた二人が樺太で出会い、
自らが守り継ぎたいものに辿り着きます。
フィクションでありながら、
登場するのはほとんど実在の人物ということを読後に知り、
とても驚きました。
金田一京介がまとめた「あいぬ物語」を軸として、
明治の初めから敗戦後まで。
山辺安之助(ヤヨマネクフ)の生涯を通して、
極寒の地で暮らす厳しさや先住民族の風俗が生き生きと描かれた、
壮大な歴史小説でした。

【ほし太の日向ぼっこ】

日時: 2022年07月29日 10:22