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ともぐい 河﨑秋子著 新潮社

第170回直木賞受賞作 河﨑秋子著「ともぐい」を読みました。
受賞前から雑誌の書評を読んで本物のマタギの話と知り、
読みたいと思っていた本です。

明治後期日露戦争前夜の北海道、
山中で一人狩りをして暮らす熊爪。
冒頭、雄鹿をしとめるシーンからぐいぐい物語に引き込まれます。
生きる術は全て養父から教わったという熊爪は、
猟師というより獣そのものの嗅覚で獲物と対峙します。
緊迫した空気や自然の厳しさ、
獲った獲物を捌き、皮をはぎ肉と内臓に分ける
描写はとてもリアルで
熊爪の体臭や血生臭さまで立ちのぼります。
ある日根室から穴もたずの熊を追ってきた太一という男が、
熊を仕留め損ね大けがを負う。
偶然そこに居合わせた熊爪が太一を治療するシーンは圧巻でした。
狩猟で得た肉や皮を町まで売りに行く熊爪と、
そこで暮らす人との関わりが後半の物語へと続き、
熊爪の運命が大きく変化していきます。
獣のように生き、死を願った熊爪が辿る最期は少し意外でしたが、
人間とは?生きるとは?死ぬとは?と
色々考えさせられる物語でした。

【ほし太の日向ぼっこ】

日時: 2024年03月16日 11:52