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『僕はイエローでホワイトで、ちょっとブルー 』ブレイディみかこ著

ブレイディみかこ著『僕はイエローでホワイトで、ちょっとブルー 』
を読みました。

タイトルは著者の息子さんがノートに走り書きしたもの。

父がアイルランド人、母が日本人(著者)の息子は、
イギリス、ブライトン市で学校ランキング1位の、
公立カトリック小学校を卒業します。
そこはまるでピーターラビットでも出て来そうな、
上品でアットホームな学校でした。
ところが、そのままカトリックの中学校に進むのではなく、
地元の元底辺中学校に進学します。
それにはちゃんと理由はありますが…。

本書は息子と友人たちの中学校生活の最初の一年半を書いたもので、
冒頭で著者が「正直、中学生の日常を書き綴ることが、
こんなに面白くなるとは考えたこともなかった」と記していますが、
私自身も読んでいてこんなに面白いとは思いもしませんでした。

とはいえ、小学校時代を平和に過ごしていた息子は、
中学で様々な壁や問題にぶちあたります。
人種差別をむき出しにする同級生とは、
最初は反発しあうものの、やがて友人となります。
差別的発言によって次第にいじめられるようになるその友人は、
それでも一日も学校を休まず皆勤賞をとります。
おかげで自分も一日も休めないという息子。
なぜなら自分が休むと彼が学校で独りになってしまうから。
いじめをする生徒は、直接彼から差別された経験があるわけでなく、
集団で、正義という剣を振り回しSNSなど匿名で彼に攻撃を加えます。
何だか今の日本の状況にも似ていてドキッとします。
制服も買えない貧しい同級生に、
母親がボランティアで繕った制服を渡すのに、
どうやったら彼を傷つけずに渡せるかを迷い考えます。

中学生でこれほどきちんと考え、行動できることに驚きました。
LGBTQの問題を含めた性教育やシティズンシップ教育のこと、
シンパシーとエンパシーの違いのことなど興味深かったです。
シンパシーは「同じような意見や関心をもっている人々の間の友情や理解」
エンパシーは「他人の感情や経験などを理解する能力」で、
私はシンパシーは得意ですが、果たしてエンパシーはどうなのか?
と考えてしまいました。
自分とは違う理念や新信念を持つ人に対して、
想像力を働かせて理解することは大変ですね。
息子はエンパシーを一言で「他人の靴を履いてみること」と表現します。

日本とは社会背景も違うので一概にこの教育がいい、
とは言えませんが一読する価値は十分にあると思いました。

【ほし太の日向ぼっこ】

日時: 2020年05月01日 16:12