何者 朝井リョウ 著 新潮文庫
「桐島部活やめるってよ」でデビューした作者による、
直木賞受賞作であり、今回映画化もされ興味があった本作品。
友人の息子さんが持っていたので借りて読みました。
物語は主人公(二宮拓人)の目線によって進行していきます。
ツイッターやフェイスブックを駆使し、
就職活動を進める大学生たち。
エントリーシート(ES)の提出やWEBテスト、
集団面接、グループディスカッションなど、
イマドキの就活の大変さが本当によくわかりました。
内定が出ないことで自分の価値が否定されたように感じてしまう。
順調な仲間には嫉妬する。
自分は人とは違うとツイッターでつぶやく。
相手は自分より価値の低いものとして分析するなど、
負の感情は誰にでもありますが、
それを目の前に差し出されてしまうと居心地が悪いものです。
読みながら、そんな居心地の悪さと、
SNSなどの独特な文体にも馴染めず、
なかなか物語に没頭できなかったのですが、
半分を過ぎたころからようやく慣れました。
今までは小学生、中学生、高校生、大学生と、
自動的に何者かになれていた自分。
この先、何者になれるのか、何者になるのか…。
いつまでたっても何者にもなれないのか…。
「痛くても、格好悪くても、あがき続けること、
自分は自分にしかなれないのだ」
そんな焦りと葛藤が痛いほど伝わってきました。
読み終わるまで、映画の配役をチェックしなかったので、
今から誰がどの役柄なのか調べるのが楽しみです。