乙女の家 朝倉かすみ 著
なんの前知識もなく表紙に引かれて読みたくなりました。
主人公は、女子高生の若竹若菜。
書き出しは「うっかりした生涯を送ってきました…」
これって太宰治の人間失格の出だしのパロディなんだけど、
人間失格がちょっとしたエッセンスとして度々出てきてとても面白い。
そして家族がぶっとんだ構成で、
『がきんちょ親爺』と家族から呼ばれているお調子者の父親と、
普通にこだわる堅物な母親、中3の弟、
父とは別居していて、晩御飯だけは毎日家に食べにくるという約束になっている。
祖母は58歳、16歳で妊娠出産、相手とは18歳で籍を入れる予定だったが、
暴走族の頭に就任したことで別れ、シングルマザーのまま。
曾祖母は、75歳で初婚の元お妾さん。
どこが乙女なの?
と突っ込みを入れたくなるほどぶっ飛んだキャラが満載でした。
若菜は、友達や家族から魅力的な脇役としてインプットされたいという願望を持ち、
キャラクターを模索中。
家出をしてみたり、アルバイトを始めたり、親友の恋を応援したり、
とする中で、それぞれの登場人物が愛すべき存在として輝きを放ちます。
本の中で、若菜を中心に、父も母も、祖母も祖父も弟の誉も、
みんなどんどん変わっていきます。
年令は大人でも、近くばっかり見ていたら成長できません。
私にとって印象に残った言葉が「目が近いね」でした。
人はいくつになってもうっかりした、
恥の多い生き方しかできないのかもしれないけれど
いくつになっても成長できるものだなあと、
この本の中で言いたかったことはそれかなあ。
時には遠くをながめてみようっと!
また一人好きな作家さんができました。