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SPAC演劇「歯車」 演出:多田淳之介

劇団SPACによる芥川龍之介原作の『歯車』を観劇しました。
演出の多田淳之介氏は、東京デスロックを主宰され
埼玉の富士見市民文化会館の芸術監督も務めています。
今回の演出は、SPACの芸術総監督 宮城さんからの依頼だということでした。

歯車は芥川の死後発表された最晩年の作品で、劇中には芥川本人らしき作家が登場します。

ある男が、知人の結婚披露宴に出席するため上京。
一緒に乗り合わせたタクシーの中、散髪屋からレインコートを着た幽霊の話を聞きます。
その後行く先々でレインコートを見かけるようになり、
次々と不快感や不安、死への恐怖に苛まれ、
ひどい頭痛とともに視界の半分に歯車が現れ回り続ける中、
ホテルの一室で執筆活動を続ける「僕」。

舞台上は大きな斜めの板が左右に組み合わされ、
それだけでも主人公の不安感が伝わります。
前半「僕」自身は登場せず、セリフのみが後方から聞こえて来ました。
後半は登場するものの、大音量の音の洪水が右から左から流れ、
まるで主人公の頭の中にいるような気分になりました。

何でもない日常風景の中に、
恐ろしいものや、不快なものを見出してしまう恐怖。
アフタートークでも話題になりましたが、
芸術家が自身の創作過程において様々な要素を削ぎ落としていくと、
神経はそれだけ鋭く顕になる。
そこに生きづらさが生じてくる。

全く私は凡人でよかったと思いました。

【ほし太の日向ぼっこ】

日時: 2018年12月04日 18:44