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「国宝」 吉田修一著

「悪人」「怒り」「横道世之介」などの小説でなじみの、
吉田修一さんが書いた歌舞伎の世界。
今年は私自身がとても歌舞伎に親しんだ一年だったので、
本好きの友人がたまたま貸してくれたこの本は、
そんな今の私にぴったりでした。
今までの吉田さんの文体とは全く違う語り口でしたが、
あっという間に物語の世界に引き込まれました。

舞台は1964年の元旦長崎の料亭「花丸」から始まります。
極道の息子として生まれた喜久雄は、
兄貴分の徳治と新年の余興として素人ながら歌舞伎を披露。
その場に招待されていたのが歌舞伎役者二代目花井半二郎でした。
その直後、やくざ同士の抗争に巻き込まれ父親を失う喜久雄。
様々ないきさつで、
徳治と一緒に長崎を離れ大阪の花井半二郎の家で暮らすことに。
そこで出会った御曹司の俊介とともに歌舞伎の修行に打ち込み、
若手の女形として二人揃って活躍するようになります。

しかし二代目半二郎が自分の代役として指名したのは、
正当な後継者である俊介ではなく喜久雄でした。
それが原因となり俊介が出奔。
天賦の才を持ちながら、正当な血筋でないことで役につけず、
世間の風当たりも強く、数々の苦行に耐え続けながら芸に打ち込む喜久雄と、
御曹司でありながら、絶望を経験し壮絶な人生を歩み這い上がってきた俊介。
そして彼らを支える女たち。
それぞれが命を懸けて打ち込んだ芸の道とは、
なんて美しく、厳しく、こんなにも魅力的なものかと感動を覚えました。

物語の中に出てくるたくさんの歌舞伎の演目も、
目の前で演じられているような臨場感を持って迫ってきました。
流れる一本の大河のような、
喜久雄の人生を傍らで見守り続けたような読後でした。

吉田修一さんの原作は映画化されているものが多いので、
この作品もぜひ映像化してもらいたいと思いますが、
一足先に尾上菊之助さんの朗読で、
オーディオブック版が配信とのニュースを見ました。
あーこれも聴いてみたいです。

【ほし太の日向ぼっこ】

日時: 2019年12月18日 18:51