
第172回直木賞受賞作品『藍を継ぐ海』を読みました。
今回の第173回は直木賞・芥川賞ともに該当作なしとなり、
受賞をきっかけに新しい作家さんの作品を読むという
きっかけがなくなってしまい少し残念です。
約50ページほどの短編5作品が掲載されていますが、
それぞれの登場人物や設定は全く違う物語です。
冒頭の「夢化けの島」は、
山口県の見島を舞台に、
地質学者の久保歩美と謎めいた若者三浦光平とが出逢い、
萩焼の最高の原料とされる見島土を探すという話。
「狼犬ダイアリー」は、
都会から負け犬のように奈良県吉野村へやってきた
ウェブデザイナーのまひろが、
絶滅したはずのニホンオオカミと遭遇しその真相を探します。
「祈りの破片」は長崎が舞台。
公務員気質に染まった男が空き家で見つけたのは、
原子力爆弾が落とされた直後の長崎市で収集された大量の原爆の遺物。
その謎を解き明かすうちに自分自身の役割を再認識していきます。
「星隕つ駅逓(ほしおつえきてい)」
北海道に住む妊婦の女性涼子が、
年老いた父親が定年まじかで勤務する郵便局の名前を残す為
隕石を発見した場所を偽ろうとします。
「藍を継ぐ海」は、
徳島県のウミガメが上陸する浜に住む中学生・沙月が、
ウミガメの卵を育てようとする物語。
ウミガメが黒潮にのってはるか北米大陸まで旅をし、
やがてまた生まれた浜に帰ってくるという
生命の神秘や自然との共生がテーマの物語。
5編とも科学的なテーマが興味深くわかりやすく描かれ、
情景描写はとても繊細で美しく、
登場人物の葛藤でより作品のテーマが鮮明に感じられました。
【ほし太の日向ぼっこ】