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ラブカは静かに弓を持つ  安壇美緒 著 集英社

今年の本屋大賞第二位の作品。
ラブカとは深海にすむ醜い鮫のことで、
この物語の中でも重要なモチーフとなっていました。

橘樹は、全著連という音楽著作権を扱う会社に勤めています。
全著連は、町の音楽教室からも著作権料を徴収することを決め、
音楽教室の大手企業ミカサから裁判を起こされます。
橘は、その裁判で有利な証言をすることを前提に、
上司から音楽教室に2年間の潜入調査を命じられます。

過去のある事件によって受けた心の傷が、
人と関わることに恐怖を感じひどい不眠に悩まされていた橘ですが、
チェロ講師の浅葉やその教え子たちとの交流、
チェロの練習に打ち込むことを通じて、
次第に変化し心が安定していきます。
最初はとても重苦しく読み進めるのも大変でした。
音楽を通して橘の心が穏やかに再生していく中、
2年の期限が刻々と近づいていきます。

周りの人をだまし続ける罪悪感と業務命令との板挟みとなった橘は、
最後にある決断をします。
それはある意味想像できた結末ですが、
それをどう決着させるかのところはハラハラドキドキしました。

頭の中に音楽が流れてくるような物語はやっぱり好きです。
チェロの音を聴きたくなりました。

【ほし太の日向ぼっこ】

日時: 2023年06月20日 16:46