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ふじの国⇔せかい演劇祭 『火傷するほど独り』

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レバノン・ベイルート生まれでカナダ在住のワジディ・ムアワット氏
演出・出演の一人芝居「火傷するほど独り」を観劇しました。

原題は「Seuls」で、一人、単独者という意味のseul
の男性複数形になっているのだそうですが、
邦題はSPAC総監督の宮城さんの命名ということでした。
(観劇後にその邦題の意味がしっくりきました)

この演劇はカナダの著名な演出家であり俳優のロベール・ルパージュ氏による、
『月の向こう側』という演劇にささげるオマージュとなっているようで、
モチーフや関係性にも共通点があるらしいのですが、
もちろん『月の向こう側』を知らない私でも充分に堪能できました。

主人公のハルワンは35歳。
引っ越したばかりの殺風景な部屋のベッドの上で、
ロベール・ルパージュについての博士論文を書いています。
結論がなかなか書けずに行き詰っているところへ
指導教授から論文の提出を早めるよう連絡が入り、
仕上げる約束をするハルワン。
実家の父親とも電話で話をするうちにケンカ別れしてしまいます。

ルパージュにインタビューするためにロシア行の準備をし、
照明写真を撮影している時に、父親が倒れたとの連絡があり…。

と、こここまでは通常の演劇の一人芝居ですが、
後半が劇的な展開となります。
ボロックのアートシーンを見ているような錯覚にも陥りました。
物語の結末は衝撃的なものでしたが、
そこで象徴的に使われるのが、
レンブラントの傑作絵画「放蕩息子の帰還」でした。

120分間のエキサイティングな体験は、
(あえて体験と言わせてください)この先の人生でも、
そうないだろうと思いました。
貴重な観劇の機会を得ることができて、
やっぱり、ふじの国⇔世界演劇祭はいいなぁと改めて感じました。

【ほし太の日向ぼっこ】

日時: 2016年05月12日 06:47