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ふじのくに⇔せかい演劇祭 2018 「民衆の敵」

ドイツ演劇界に大きな変革をもたらしたと言われる
トーマス・オスターマイアー氏演出の演劇「民衆の敵」を観劇しました。

原作は136年も前にイプセンによって書かれたものだそうですが、
とても普遍的なテーマなので、全く古さは感じませんでした。

医師の家に集まる友人たち。
趣味のバンド練習をしながら食事をし会話を楽しむ。
どこにでもいる若者たちの日常から始まります。
とてもお洒落な雰囲気の中、達者な演奏と歌、場面転換も凝っていました。

とある温泉町で起こった公害。
いち早く気づいた医師がこの問題を告発しようとする。
また一方、町の経済は温泉に深く依存しているため、
政治家はそのことを隠そうとする。
この医師と政治家は実の兄弟でもあります。

医師の友人の新聞記者は、
始めは協力して記事にすることを約束するけれど、
次第に政治家に取り入り医師を弾劾する側に回る。

クライマックスとなるのは町民集会での医師の演説。
正義という名の下に極端な思想を掲げる彼の演説の後、
演出家は観客の私たちにも是非を問います。

民衆の敵とは誰なのか、正義とは何なのか、
この演劇を観ながらそのことを考えずにはいられませんでした。

エンディングで医師夫婦が見せた人間臭い表情が
さらにこの先の二人を想像させます。
日本初演のこの素晴らしい演劇を、
ここ静岡にいながら観劇できる幸せをとても感じた150分間でした。

【ほし太の日向ぼっこ】

日時: 2018年05月01日 17:13