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『夏物語 』 川上未映子 著 文藝春秋

ラジオで聞いて読みたくなり図書館でリクエスト。
それから待つこと数か月、ようやく読むことができました。
そしたら最近今年の本屋大賞の候補作としてノミネートされました。
話題作だったのですね。

一部は、以前芥川賞を受賞した「乳と卵」を、
加筆修正したものだそうですが、
なれない大阪弁の会話主体の文章と少々重い内容で、
私にはとても読みづらく時間がかかりました。

東京で作家として働く夏子のもとに、
姉の巻子と娘の緑子がやってきます。
夏子は独身で30歳、巻子は39歳の一人親で、
場末のスナックでホステスをしながら緑子を育てています。
巻子は最近ずっと豊胸手術を受けることに夢中になっていて、
半年ほど前から緑子は巻子とは口をきかず、
会話はノートに書いての筆談です。
物語は夏子の目線で書かれていますが、
ところどころに緑子の手記が入ります。
緑子は周りの同級生たちが初潮を迎える中で、
自分の身体の変化に戸惑いがあり複雑な気持ちを抱えています。

タイトル通り、冬に読んでいても暑苦しさを感じ、
汗が流れて背中にシャツが貼りついてくるような、
居心地の悪さを感じました。
思春期の緑子の気持ちは少し理解できました。
巻子や夏子にはあまり共感できませんでしたが、
終わり方は意外とすっきりしました。

二部は、夏子がAIDという精子提供によって子供を産むまでの物語。
一部に比べてとても読みやすかったです。

AIDによって生まれた逢沢が、
本当の父親のことを知りたくても手掛かりすらないこと、
生まれてきたこと自体が不幸だという善百合子。

親しい編集者の突然の死や、
友人の作家でシングルマザーの遊佐の話、
逢沢の父親が語る「ボイジャーの話」、
(私はこのボイジャーの話が一番よかったです)
夏子が小学生だった時に住んでいた家を訪ねる場面など、
色々心に残るシーンがありました。

読み終えて、
子どもは自らが望んで生まれてくるわけではないのだから、
その子が「生まれてきてよかった」と心から思えること、
それこそが、親がするべき一番の責任なのだと強く感じました。

【ほし太の日向ぼっこ】

日時: 2020年02月02日 15:42