モンマルトル便り 矢内原伊作 著
少し前に私の好きなNHKジオ第一で放送中の、
「石丸謙二郎の山カフェ」で紹介された、
紀行文がとても読んでみたくて探しました。
もう絶版のため買うことができないので、
図書館の蔵書を調べたら静岡市内全館で一冊だけ書庫にありました。
紹介されたのは「リルケの墓」というタイトルでしたが、
その文章も含めていくつかの章立てになっているのがこの、
「モンマルトル便り」でした。
この本自体も絶版で買えません。
矢内原伊作さんは哲学者ですが、
詩人リルケを愛しヨーロッパ留学中にリルケの墓を訪ねます。
その時の旅の情景がとても美しい文章で紡がれます。
リルケが晩年を過ごし墓もある村では、
「~木も家も山も空もそれぞれがあるべきところに己を保ち、
目に見えぬ秩序を形成し、沈黙の音楽を奏でている。
このような自然の中で詩人の為し得ることとは一体何だろう、
眼に見えぬものとなって大気の中に溶けいることでないとすればー」
という矢内原さんの印象が、
まるで私もその場所にいるかのように感じられて、
夜、眠る前の数分間がとても幸せな満たされた気持ちになれました。
書かれたのは50年ほど前なのに、きっと今も変わらずに、
この村はそのままひっそりとそこにあるのでしょう。
行ったことのないヨーロッパの小さな村を心の中に感じることができた、
とても印象深い本でした。
できれば手元において時々開いて読みたいので、
古本屋さんで探してみようかしら。