海を破る者 今村翔吾 著 文藝春秋
かつては源頼朝から「源 北條に次ぐ」と言われた、
伊予の名門・河野家ですが、
承久の乱で京方に加担したことで所領のほとんどを失い、
また、一族の内紛により見る影もなく没落しています。
河野家の現当主、河野六郎道有は、
領地の立て直しや伯父との微妙な緊張関係に悩まされる中、
海の向こうから元が侵攻してくるという知らせを受けます。
本書は、六郎率いる河野一族が水軍として、
襲来してくる元軍と戦う史実をもとに、
元に滅ぼされ奴隷として売られてきた「るうし」という国の、
金髪碧眼の美少女「れいな」と
高麗人の「はん」との交流により、
六郎や河野一族の人々の心が変化していく様子が描かれます。
また実際に一族の出身である、
踊念仏を広めた一遍との繋がりも興味深いものでした。
『人は己の知らぬものに関してはひたすらに無関心である。
理解しようとするからこそ慈しみ、理解できぬからこそ憎しみあう』
本当にそうだなあと思います。