ふじのくに演劇祭⇔「THE BEE」
ふじのくに⇔演劇祭の目玉とも言える「THE BEE」を観ました。
とても面白く、とても恐ろしい演劇でした。
前半は圧倒的なスピード感と最小限のセットで
物語の状況を観客に知らしめます。
たった4名の俳優が1人で何役もこなし、
その代わりようも鮮やかでした。
宮沢りえさんが出演するということで、
りえさん目当ての観客も多かったと思いますが、
その演技力には驚きました。
4人がかなりの演技力がなければ成り立たない芝居です。
後半は象徴的なシーンを積み上げていき、
どんな人間も持っている、
悪という感情の行き場を表現します。
被害者であった井戸が自分自身を、
「被害者でいる適正がないことがわかった」
と言いますが、
もし、自分の大切な人が殺されたり、命の危険に晒されたら、
誰でもその相手を殺してやりたいと思うでしょう。
だからその場面での井戸の気持ちは理解できます。
けれど犯人とのやりとりを重ねるうちに、
もはや目的は家族の救済ではなく、ひたすら悪へと向かいます。
それは井戸の「…彼が悪くなればなるほど、それは善いことなのです。」
という台詞が象徴していたように思います。
最初は小さな個人だけの悪が、
民族、国家へと負の連鎖のイメージをエスカレートさせて物語は終わります。
観終わった後はかなり重い気分になりますが、
この短い時間に表現された内容を考えると、
まさに一流のエンターテイメントだと思いました。
それにしても、劇中歌が耳に残って離れません。