
「ものすごい小説を読んでしまった!」
と最後のページを閉じた時に感じました。
上下巻で1100ページあまり。
それでもぐいぐい引き込まれ、寝る間も惜しんで読み終えました。
1924年6月8日、
エヴェレスト登頂を目指していたマロリーとアーヴィンは、
そのまま帰らぬ人となり、
その後何度も人類が挑んだエヴェレス遠征はことごとく失敗に終わり、
人類が初めてその頂に立ったのは、マロリーの事故の29年後だった。
しかし実はマロリーはエヴェレストの頂に到達し、
下山中に事故にあったのではないかという説が登山界には存在していた。
その鍵となるのがマロリーが持っていたという一台のカメラ。
その中のフィルムを現像すればすべてがわかるというもの。
カメラマンの深町誠は、
仲間と人生最初で最後のエヴェレスト遠征を試み、
隊員2名の滑落事故により失敗に終わる。
失意の中、偶然カトマンズのある店で見つけた古いカメラは、
マロリーの遺品ではないかと直感する。
そのカメラを手に入れた後、何者かに盗まれ、
カメラを追っているうちに、ピカール・サンと名のる一人の日本人を知ることとなる。
そのピカール・サンが、羽生丈二という名のある登山家であったこと、
彼がエヴァレスト遠征で事故を起こし行方不明となっていることなど、
羽生のことを調べるうちに、羽生がこれからやろうとしている、
前人未踏の計画を知ることとなる。
自分の人生に行き詰まりを感じていた深町は、
次第にのめり込むように羽生と係わっていく。
事実を織り交ぜ、
実在した登山家をモデルとした登場人物が繰り広げる人間模様。
そして臨場感あふれる山の描写。
登山界一のミステリーを織り交ぜたとても密度の濃い小説でした。
特に後半150ページは、息もつけないほど、
まるで自分自身もエヴェレストの頂上を目指しているような、
息の詰まる展開でした。
【ほし太の日向ぼっこ】