SPAC演劇「人形の家」
劇団SPACの新作「人形の家」を観劇しました。
ヘンリック・イプセンが1879年に発表した戯曲を、
宮城さんが昭和10年(1935)の日本に置き換えて演出。
舞台装置はSPACの代表作の一つと言える、
同じくイプセンの「ペール・ギュント」の装置と対をなしていて、
観劇前から期待が高まりました。
ぺール・ギュントは双六型の舞台のあちらこちらから
俳優が出入りする仕組みとなっていて、
異世界のものたちなどの出現に使われていました。
今回は壁面に三種の神器と呼ばれた、
冷蔵庫や洗濯機、テレビ、自動車、ミシンなどが描かれていて、
幸せな家庭生活の象徴なのだとわかります。
後半、それらのピースが徐々に欠落していく仕掛けは、
観ているこちら側にも不穏な空気感が伝わってきました。
劇中に夫のヘルメルが「自分の所有している一番美しいもの」
と妻を表現し、文字通りそれで幸せを感じていたノーラが、
夫のためにした借金のことから夫に激怒され、
自分が人形だったことに気付きます。
ノーラが家を出ていくところで物語は終わります。
その後のノーラがどうなったのか、
そのヒントとして、
アフタートークで、
伊豆の戸田で深海魚直送便という会社を立ち上げた女性起業家、
青山沙織さんと宮城さんとの対談があり、
とても興味深いお話が聞けました。
ノーラも苦労や壁にぶち当たったりはしそうですが、
先々での出会いや人に助けられ、
案外生き生きと残りの人生を過ごしたような気がしました。
そして現代でも同じようなことが繰り返されていて、
本質はあまり変わっていないのではと感じました。