月イチ歌舞伎
シネマ歌舞伎「野田版 桜の森の満開の下」をみました。
坂口安吾の「桜の森の満開の下」と「夜長姫と耳男」という小説を下敷きに、
劇団夢の遊眠社によって初演された演劇「贋作 桜の森の満開の下」は、
野田秀樹氏の最高傑作とも称される戯曲で、その後何度も再演されているのだそう。
それを歌舞伎に昇華させ、
平成29年8月に中村勘九郎・七之助の主演により、歌舞伎座で上演されたもの。
演劇の方は観劇していないのでわかりませんが、
美しい舞台美術と豪華な衣装、言葉遊び的なダジャレと、
役者さんたちの確かな演技力に圧倒されました。
桜の木の下には死体が埋まっている…。
こんな言い伝えを聞いたことがあります。
この歌舞伎も、桜の美しさと恐ろしさを象徴とし、
人間たちの愚かさ、権力闘争の醜さ、
そしていつの世も必要悪とされる鬼の存在に、
夜長姫と耳男の純粋で残酷な愛情。
その全てがシンクロして、フィナーレへと突き進みます。
最後に訪れた虚無の世界、
ただただ桜の花びらが舞い散るシーンでは胸にグッと迫るものがありました。
シネマ歌舞伎ならではの醍醐味で、役者さんの表情までよくわかり、
その世界観にどっぷりと浸かることができた2時間強でした。