世界はもっと美しくなる 奈良少年刑務所詩集 寮美千子編 ロクリン社
詩人の寮美千子さんとご主人が、9年間に渡り奈良少年刑務所で行ってきた、
社会性涵養プログラムの授業を通して書かれた少年たちの詩集。
「世界はもっと美しくなる」を読みました。
世間的には、凶悪犯とされる彼らは、
犯罪者の前に被害者でもあり、社会から取り残された存在でした。
この授業では、自作の詩を朗読し聞いていたみなが感想を話します。
その体験は、他人を受け入れ、また受容されることでした。
共感されること。
共感されなくても自作の詩に意見を言ってもらうだけで、
彼らにとっては貴重な経験だったことでしょう。
その授業は、まるで森林浴のように、
教師も生徒も看守さんも、みな心が洗われるような体験だったといいます。
詩の言葉の一つ一つ、
どんな気持ちで紡がれたのかを想像するだけで涙が込み上げてきました。
奈良少年刑務所は、明治時代に造られた美しい建造物です。
表紙にも、中にもたくさんの写真が収められていました。
現在この奈良少年刑務所は閉所となり、
新たに民間の手により高級ホテルに生まれ変わるのだそうです。
ここにいた少年たちの居場所はこれからどうなってしまうのでしょう。
それだけが心配で心が痛みました。